思い込みが 道を閉ざす 7月
―Assumption will close doors,not open them.―
「趣味をつくれ」。先輩から言われた言葉である。元々趣味が無いわけではなかった。「服が好きです、なので趣味は服です」と答えたが、よくよく考えてみると確かに趣味らしい趣味でもない気がする。服を自作するのかといえばそうでもないし、服の販売に携わっているわけでもない。ただ単純に店頭に行って購入し、着るだけである。いわば「服を着るのが趣味です」といったところか・・・。これでは誤解を与えかねない。そんなわけで、大学院卒業後、都内のお寺に随身し法務をさせていただく傍ら、趣味を見つけようと思い立った。
しかし元来の、物事をマイナスに捉えやすい性格が災いして、趣味探しは難を極めた。何しろ、始める前から失敗することや、人からどう思われるだろうかと考えてしまう。未だ一度も経験してもいないことを勝手に判断し、見限っていたのである。これではいけないと、ひねくれた考え方だが逆転の発想をしてみた。要は、絶対にハマらないだろうと思うことをしてみようと。
以前、ボルダリングを勧められたことがあった。ボルダリングとは、ロッククライミングとほぼ同じで、最近は続々と専用のジムができる程の人気という。当時は「私の腕力では無理だろう」と断ったし、正直興味も湧かなかった。何故苦しい思いをしてまで壁を登らねばならないのだ、と。
そんな思いに逆転の発想をあてはめ、近所のボルダリングジムに行ってみた。
簡単な初心者講習を受けて登ってみると、これが思った以上に面白い。筋力に自信がない私でも、簡単なコースならばスイスイ登れる。どうやら重要なのは腕ではなく足の筋力だそうだ。何より、ゴールした時の興奮は想像以上だった。その日は夢中で登ったが、翌日全身が筋肉痛で、朝のお勤めが辛かったのは、いうまでもない。
結果として、現在の私の趣味はボルダリングである。今までの私は、どうせ上手くいかない、すぐ飽きてしまうだろうと思い込み、まさに道を閉ざしていた。やる前に悩むより、実際に経験してみるものだなと実感した。
お念仏にも同じことがいえる。誰でもできる「称名念仏」、疑うより〝まずは南無阿弥陀仏〟とおとなえするのが一番。法然上人がおっしゃるように、信心はお念仏をとなえる中に具わっているのだから。
お盆の棚経の季節。まずは一緒におとなえしましょうと、お檀家さんに伝えようと思う。
(神奈川県横浜市 宗泉寺 横井隆昌)