雪の下新たな命が春を待つ 2月
―Endure the snows because, beneath them,
new life awaits the coming of spring.―
毎日の生活の中で、私たちはさまざまな罪を作りながら生きています。ほんの些細なことで相手を恨んだり、有名人を見て羨む心が沸き起こります。また、言葉で相手を傷つけてしまうこともあります。
私自身も、これまでに言葉で相手を傷つけてしまったことが、何度もあります。小さい頃、友達と喧嘩したときのことです。今では何を言ったのか思い出せませんが、確かに私の言葉が問題だったのは、間違いありません。その日は喧嘩別れのままになりました。帰宅してからは、どう仲直りしたらいいのかばかりを考えていましたが思いつかず、次の日もお互いに話をせずにいました。心の中では「なんて話しかけたらいいのか」と考えては消え、考えては消え…と続いていましたが、結局は思いつかず、一日が終わってしまいました。小さい頃の一日は長い時間です。心の問題を抱えている時間は特に長く感じるものです。その長い時間、「仲直りしたい」という気持ちは雪に閉ざされたようになっていました。
そんな心の雪が解け、仲直りが果たせたのは、その喧嘩を見ていた友達が間に入ってくれたからでした。その友達がいなければもうしばらくは雪の中でもがいていたはずです。
『仏名会礼懺儀』に、「一人一日の中に 八億四千の念あり 念念の中の所作 皆是三途の業といえり」とあります。人の心には一日のうちに無数ともいえる思いが湧き起こります。それらは皆罪なのですが、私たち凡夫にはその思いを抑えることは不可能です。
多くの思いに囚われて罪を作ってしまい、そのことに耐えて生きる私たちは、雪の中、春待つ木々が日々生命力を蓄えるように、コツコツとお念仏をとなえることが、とても大切です。
宗祖法然上人のお歌に「雪のうちに仏の御名を 称ふれば つもれるつみぞ やがてきえぬる」とあります。
日々、私たちの煩悩、罪は雪のように降り積もります。そのことをしっかりと見つめ「阿弥陀さまどうかお救いください」とお念仏をとなえれば、私たちの心に光があたり、やがて罪は消えていきます。雪の中には、お念仏によって阿弥陀さまの「西方極楽浄土」に救われたいとの心が日々育っていくのです。
湧き起こる思いにより罪を作る私たちの心が、お念仏で安らぎを得ることを信じ、春には花が咲くように、極楽往生のためにお念仏の生活であるよう日々、心掛けていきましょう。
(山形県東根市 西興寺 寺崎公章)