「今年こそ」実行するのはこのわたし 1月
―This is the year to put thought into action.―
山門前の掲示板。道行く人が立ち止まって、見たり書き留めたり。私のお寺では毎月、仏典や標語から様々な言葉を掲示しています。開かれた寺を目指すという模索の中から祖父が始めました。私は子どもながらに、黒塗りの板に毎月ことばを書くその姿を見て、いつも続けてすごいなあと思ったものです。祖父亡き後は祖母が引き継ぎ、もう半世紀になります。
私は3年前から、年に4回発行している寺報を書くようになりました。最初は何を書けばよいのか……。読むのは易し、書くのは難し。読み手はどんなことを思うのだろうと不安になることもありました。しかし、思い切って書いてみると、「なるほどね」とか、「よかったよ」など、反応が返ってくるようになり、皆さんが読んでくださっているのだなと、やりがいを感じるようになりました。
何かを始めたり続けるには、不安はつきものです。「ゆかば、その道はひらけん」(『仏教聖典』第56節)。行けば道は開かれる、思い切ってやってみなさいとのお釈迦さまの言葉です。まずは行ってみて、自身の中にひそむ多少の能力を発見していくのです。「自分が完成してから」では、いつまでたっても、何も見い出せないでしょう。やはり思い切って行動することが必要です。何かを達成するには、いくら心で思っていても実践が伴わなければなりません。
仏教では、人間の行為には「身・口・意」の三業があるとします。身体で行うこと、ことばを発すること、心でものごとを考えること。この「身・口・意」の三つが一致すること、それを仏教では重要であるとします。手足を動かし、身体での実践によって、相手にお手本を示していく。身をもって行うことはとても重要です。
お釈迦さまは次のようにもおっしゃいました。「うるわしく、あでやかに咲く花にも、香りのないものがあるように、善く説かれたことばでも、それを実践しない人には、実りはない」(『法句経』51)。あでやかに咲く花であっても、香りのないものがあります。花にもいろいろあるように、よく説かれた言葉でも、それを実践しない人には実りがない。私自身が言われているような感じがします。
しっかりとした考えや教えのもとに、勇気をもって、言葉や身体にあらわして行動する。お念仏をとなえながら、今年は思い切って一歩進み、トライする一年にしたいものです。
(東京都港区 妙定院 小林惇道)