支えあう心に 微笑の風 (4月)
―When we support each other, a smile blows into our heart like a breeze.―
ブラジルの年回法要は、親戚のみならず姻戚関係者までも、一堂に会することが一般的で、参列者が100名を超すことも珍しくない。
先日、95歳で大往生されたおばあさんの三回忌法要が、120名以上の子、孫、ひ孫、その家族で埋め尽くされた本堂で営まれた。数多の参列者の中、目を腫らしながら手を合わせていた一人の20歳の若い娘さん。10年前、この子がまだ10歳の少女だったころ、落慶したばかりの本堂前の階段を、足の悪いおばあさんの腕を肩に回して支えながら一緒に上がってきた。私も階段半ばまで下りて出迎え、おばあさんが「孫たちに支えられんと一人じゃ何もできませんわ」と、あいさつ代わりにおっしゃられたそのとき、「ノン(違うわ)、バアチャンが、私を抱っこしてくれてるのよ」とポルトガル語で孫娘が一言。おばあさんは「そうか、そうか」と目を細めていらっしゃった。
そのおばあさんは新婚早々、嫁家総勢12名と共にブラジルへ移住、各地を転々とする、あてのない日々が続いたと言う。若き嫁として昼夜なく働き続け、そして一家の移民世代最後の生き残りとなった。言葉で言い尽くせないご苦労があったことは、節くれだった手指、くたびれた足腰からうかがえた。驚いたことに、数十人いる孫、ひ孫の名前を全て覚えていて、寄ってくる子どもらを抱きしめ、その節くれだった手で頭をなでながら「今が一番幸せ」と微笑んでおられた。
お葬式では、孫、ひ孫が棺を取り囲み、我先に手や顔をなでながら号泣。人と死別する悲しみをバアチャンから教わった。
法要の後、「みんな沢山集まって、バアチャンは喜んでくれてる」彼女はそう言って真っ赤な目で笑った。一緒にいた従兄弟たちも、やさしい春風を頬に受けたように微笑みながらその言葉にうなずいた。
「微風吹動」
極楽ではそよ風が吹き、宝玉を揺らし、様々な心地よい音を奏でる、と『阿弥陀経』にある。
彼女たちにとってバアチャンは過去の人でない。その微笑みは極楽からのそよ風となり、孫たちそれぞれの中でやさしい音を奏でている。
もうすぐ東日本大震災から丸2年。11日にはブラジルでも慰霊法要が営まれる。微笑みの春風よ極楽から大いに吹きわたれ、と願わずにいられない。
(南米開教区 イビウーナ日伯寺 櫻井聡祐)


